2016年08月03日

向かう前は先に

典医寺の薬房に居た医員達が薬を作り終えたのか、先程までの慌ただしい気配はしなくなった。
恐らく出来上がった薬をチャン侍医に持って行く者は持って行き、残った者も夜の初めには居なくなるのだろうと思う。

「…俺は一旦兵舎に戻ります。ウダルチの奴推拿治療らも気になっているだろうと思いますので。」
そういいながら薬を塗るために上半身を晒していたので着物を着ながら言う。

今はまだ夕方にもなっていない上、俺の仕事もまだ残っている
昼のうちならばもともと武閣氏も警護していないのだから大丈夫だろう。
「うん、そうね。その方がいいわ。」
そして、少し顔を赤らめているこの女も立ち上がった。

「…その、…何時…来てくれるの?」
珍しく横を向いたまま床の方を向いて聞いてくる。
「夕餉が済んだ頃には来られるはずだが…今回の一件もある故恐らく王様にもお話せねばならん…夜には参ります。」

そう、これから一旦兵舎に戻って今日の典医寺の警護をトクマンとトルべから別の奴にしておかなければ要らん噂が飛び交うだけだ…
その後王様の警護がもともと入っている上にさっき叔母上が王様にも話すと言っていた、恐らく説明を求められるのだろう…

この説明が問題だ。
チャン侍医の言う事には王様も俺とこの女の事を知っていて確認するためにチャン侍医を寄越したと言う
さて、なんと言えば良いのか…

考えても始まらん、とっとと終わらせよう。

「では、俺はこれで。後で伺います。」
そう言って、部屋から出ようと入口近くまで来て振り返る髮線後移とこの女はそおっと右手を挙げて横に振る。
「いってらっしゃい。夜に来てくれるのを待ってるわ。」

そう言って手を振る様子を見ていると立ち眩みの様な感覚に襲われた
頭がくらくらする。
そう思ったら自分の身体が勝手に動いて折角入口まで来ていたのに、またこの女の前まで来て身体を攫う様に抱き締め、勢いよく口付ける

自分の身体は痛みつけられてからそう時間も経っていないのであちこち打たれた所がぎしぎしと痛む
でもそれ以上に今瞬間にこの女の蜜が吸いたくなった

実はこの女の蜜には薬でも入っているんじゃないのか?
常用性の高い”麻薬”と言う薬が有ると侍医も言っていた。
こんなに毎日蜜を吸い続けないと気が済まないなんて…本当に俺はどうにかしてしまったみたいだ。

こんな煩い、高飛車な女が”可愛い”と思える自分に一番驚く。
俺の好みはこんな女じゃない筈なのに。
物静かで、芯が強くて、…まるで逆の女なのにこの惹かれ方は異常だ。

目を薄く開けるとこの女は頬をうっすら桃色に染め、必死に俺の舌に応えようとしているのが見える。唇の端から己と俺の蜜が混ざり合いながら首筋の方に一筋流れていく。

もう駄目だ、俺はこの部屋から出て兵舎に行かねば、いい加減誰かが俺を呼びに来る。
長居しすぎた。
それなのにこの女も俺の着物の襟をぎゅうと握り離さない。
…俺も唇を離すのが惜しい、この女の腰から腕を離すのが…惜しい。

がくんとこの女の足から力が抜ける

その時この部屋の扉を叩く音がする。
そして、外から俺を探す声がする

「医仙、こちらにテジャンはお出でではありませんか?」
扉の向こうから大きな声でチュンソクが言った
その声を聴いてこの女の目が開かれ、襟を掴んでいたその手で俺の胸を軽く叩く

分かってる、口付けをやめてチュンソクに返事をしろと言うんだろ?
「医仙?入ってもよろしいですか?」
そう言ってチュンソクが中に入ってきそうになるその時、やっと唇を離す
この女は腰が砕けちまったらしく力なく俺に抱かれている
そのままの体勢でチュンソクに声をかける

「プジャン、今医仙に診察してい第一醫美ただいておる、これが終わり次第すぐ兵舎に行って隊員を集めておいてくれ。」
「テジャン!やはりここでいらっしゃいましたか!分かりましたそのように致します。すぐおいでいただけるのですか?」
「あぁ、もう診察は終わった、薬を塗っていただいたらすぐ向かう!」
「イェ!では、すぐに!」
そう、チュンソクは言い残し典医寺の医仙の部屋の前から立ち去った。
その音を聞いて俺の腕の中この女は大きなため息を吐いた
  


Posted by だけを平らに削っ at 15:34Comments(0)
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