2017年03月17日

く息しそうに王を吐

大きな鉄槌が運び込まれ、力自慢の勇者が水槽のガラスをどんと割ってしまった。
ずいと進めた王の爪先を認めると、ガラス越しに見るよりも一回りも小さく見えた人魚は、輝く髪の間から王さまの方をおずおずと見上げた。
王は、影のように仕える宦官すらも人払いし、広い浴室に哀れな人魚と二人きりになった。

「わ……たしを自由に……して。あの人の眠る海の底へ行きたい……。どうぞ……。」

竪琴を奏でるような驚くほど美しい声を発すると、人魚は王さまの足卓悅元に縋った。声と姿から察するに、青い人魚は少年のようだった。

「……なんという声だ。人魚の歌を聞いた漁師は、誘われるように海の底へ行きたくなるというが……まさに胸震う奇跡の声だ。青い小さな人魚よ。わたしの為に歌ってくれないか?」

青い小さな人魚はふるふるとかぶりを振って、諾(はい)とは言わなかった。同じ言葉だけを繰り返した。

「わたしを自由にして。あの人の眠る海の底へ行きたい……。」

恐ろしい王さまに逆らう者は、この国には誰一人としていないのに……。
苛立った王さまは、長い髪を掴むとぱんと人魚の頬を打った。そして、知っていたの卓悅Biodermaにわざと口にし人魚の様子を見た。

「海の底に眠るあの人とは、誰のことだ?名を言え。」

「……スル……タン、マハンメド王……。」

人魚は王さまの目が、愛するスルタンとは違い、これまで散々に自分を虐げて来た者たちと同じ物だと気が付いた。怯えて顔が強張り、両の手を胸のあたりで交差し震えた。

「青い小さな人魚よ、海に身を投げた臆病者のスルタンは、魚のお前を人のように抱いたのか?」

そんな意地悪な質問に人魚は答えず、ただ哀さまを見つめていた。モザイクタイルで装飾された浴室に、静かに時だけが流れていた。

やがて、人魚は顔色を変えると、喉元を抑えはっはっと忙しなき、水の溜まった浴槽へと、這って行こうとした。

「……あ……ぁ……」

「どうした?水が欲しいのか?一見したところ人と変わらぬように見えるが、やはり海の者だな。長く水から離れることはできないのだな。」

しばらくは陸上で過ごすこともできたが、もともと人魚は海の生き卓悅假貨物なのだと、王さまも今更のように気が付く。水を求めて、人魚は手を伸ばし喘いだ。
薄い上半身にはないが、鱗の生えた青い足は、水がなければ乾いて痛むのだろう。王さまは、髪を掴むと浴槽に人魚を投げ込み首元に並ぶ鰓孔(えらあな)を押さえてみた。  


Posted by だけを平らに削っ at 13:18Comments(0)
QRコード
QRCODE
庄内・村山・新庄・置賜の情報はコチラ!

山形情報ガイド・んだ!ブログ

アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 0人
プロフィール
だけを平らに削っ