2016年03月16日

に手すようなお

   

   「留吉、お爺ちゃんはお元気だしたか?」
 店先で、九兵衛の長女お篠が迎えた。
   「はい、今度来る時は、薯蕷のおまん(じょうよのまんじゅう)を持ってと仰いました」
   「へえー、お爺ちゃん、いつ銅鑼灣 髮型屋から甘党になられたのやろか」
   「多分、おさきさんに食べさせる為ですやろ」
   「もしかしたらお爺さん、おさきさんと一緒にやないやろな」
   「そら、男と女やもん、分かりませんよ」
 留吉はそう言ってニヤリと笑った。
   「あほっ、三十も歳が違うのに…」
 お篠は少し考えて、もしやと思ったのか
   「えーっ、うっそー、今度行くときは、わたしが確かめに行きますさかい」
と、付け足した。

   「これっ、あんたら店先でなにを騒いでいますのや」
 御寮(九兵衛の妻?お篠の母)がのれんを掻き分けて奥から出てきた。
   「お篠は奥へ下がりなはれ、何のために店先に立っていますのや」と叱り、
   「留吉は、ご苦労さんやったな、お父はんは機嫌よくしていなさったか」
   「はい、お元気過ぎるくらいでした、それで、いとはんが親旦那さんに確かめたいことがお有りやそうで、今度は一緒に行くと仰いました」
   「そら、半時(はんとき=約1時間)もあれば行銅鑼灣 髮型屋けるとこやさかい行ってもええけど、お父はんが元気すぎたら、何をお篠が確かめるのや?」
 御寮は首を傾げながら言った。
   「女中のお寅を連れていきなはれや」
 若い男と女だから監視役だなと、留吉の勘がはたらいた。

 その四日後、早朝から京菓子の店に注文しておいた出来たての薯蕷饅頭を受け取り、序に宇治茶の店で玉露を買い求め、お篠と留吉、そしてお寅の三人はお花見気分で親旦那の隠居宅へ向かった。
 こんなに遠くに隠居所を構えたのは、近くだとついお店の商いに口を挟むおそれがあると、親旦那の思慮からである。そのお蔭で、こうして息抜きが出来るというもの。留吉は内心喜んでこそすれ、決して面倒とは思わなかった。お篠と留吉が仲良く話しながら歩いているのを横目に、お寅は少々嫉妬していたかも知れない。 

   「あら、いとはん、おこしやす」
 と、女中のおさきが出迎えた。
   「留吉も、お寅も来ていますのやで」
 二人が遅れて入ってきた。
   「まあまあ、お疲れどしたなぁ、ご苦労さんどす」
 おさきは京都の出身である。声を聞きつけて、親旦那が顔をだした。
   「お爺ちゃんにお話しがあります」
   「なんや? 恐い顔して」
   「おさきさんをお嫁に迎えるって、本気だすか?」
   「なんや、そんなことかいな、それやったら本気もなにも、既に夫婦だす、なあ、おさき」
 親旦那が真顔で言ったので、おさきが吹き銅鑼灣 髮型屋出し笑いして手を横に振った。
   「嘘どすえ、そんな噂がたっていますのかいな、ご隠居さんは女中方やあらしません」 
   「それよかお篠と留吉、お前たちはどうなんや、えろう仲がええそうやないか」
 意気込んでいたお篠は赤面した。
   「嫌やわぁ、誰がそんな告げ口したんや」
 満更でもなさそうなお篠であるが、返り討ちにあって来た時の気負いを無くしてしまった。留吉は二人の会話を黙って聞いていたが、お寅の冷たい視線を感じて一波乱おこりそうな予感に襲われた。




Posted by だけを平らに削っ at 12:24│Comments(0)
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