2016年04月01日

を付けてるのか


 
 「三四郎、もう出掛けぬから馬を厩舎に繋いでくれ」
   「はい、先生」
 三太郎は女を診療部屋に運んだ。すぐさま女を診ていた三太郎の顔が一瞬曇った。
   「いかん、高熱の所為で心の臓が可成り弱っている、解熱剤は先ほど飲ませたので、少しずつ湯冷ましをのませてやってくれ」
   「はい、先生」
 弟子の佐助が用意する為に立った。三太郎の実母迪士尼美語價格お民は、井戸水を汲み、手桶に満たして持ってきた、手拭いを濡らして、女の額を冷やす為だ。

 その日、夕日が沈む頃になって、女の表情から苦痛が和らいだように思えた。
   「まだ安心は出来ない、今夜がヤマだろう、安静にしてやってくれ」
 夜が更けて、弟子たちは寝かせたが、三太郎は寝ずの看病をした。夜が明ける頃になると、女は安らかな寝息を立てていた。

   「先生、女の人が目を覚ましました」
   「そうか、では少し重湯を飲ませてみよう」
   「はい、すぐに支度します」
 佐助も三四郎も、よく働いてくれる。早くも診療が出来るようになっており、三太郎の留守の折は、二人で相談しながら薬も出している。三太郎にとっては、頼もしい弟子たちである。
 
   「ここは?」
 女が口を開いた。
   「私の診療所だ、言っておくが、お金は頂戴しないので安心して静養しなさい」
   「ありがとうございます」
   「私はここの医者で、緒方三太郎と申す、あなたのお名前は?」
   「はい、雪と申します」
   「お雪さんですか、お雪さんはどちらへ行かれる途中で倒れたのかな?」
   「嫁ぎ先で離縁されて、実家へ戻る馬爾代夫旅行團ところでした」
   「よろしかったら、離縁された訳を聞かせてくれぬか?」
   「嫁に貰われて、三年経ったのに子供が出来なかったことと、私が病気がちで婚家の働き手として役に立たなかったからです」
   「子供が出来ないのは、お雪さんの所為ばかりとは言えない、病気がちなのは、随分無理をさせられた所為のように思うが…」
   「ありがとうございます、こんなに優しく言って頂いたのは初めてです」
   「わかりますよ、病気になっても、休ませて貰え無かったのだろう」
   「それが嫁の務めの常なのです」
   「酷いことだ」
 今まで我慢をしていたのであろう、三太郎の労りの言葉に、思わずお雪は涙したようであった。
   「実家に帰っても、私の居場所はありません、世間体を気にする親兄弟ですから、すぐに追い出されることでしょう」
   「それで行く宛は?」
   「ありません、どこかの宿場で、飯炊き女にでも雇って貰います」
   「そうか、それではどうだろう、お元気になったら、ここで働かぬか?」
   「えっ、本当ですか?」
   「今は養生所とは名ばかりで、多くの患者さんをお預かりすることが出来ない、せめて十人以上の患者さんに養生していただけるようにしたいのだが、人出が足りないのだ」
   「ありがとうございます、それで私に何が出来ましょう?」
   「私の母と共に、患者さんや私どもの食事の世話です」
   「私に出来ましょうか?」
   「患者さんが増えれば、賄い役があと三人はほしいところだ」
   「ぜひ、働かせてください、お願い致します」
   「わかった、では養生して元気になってくだされ」
   「はい、頑張ります」
   「いや、頑張らなくてもいいのだ、決して無理をしてはいけない」
 元気になったら実家に戻り、離縁された訳を話して、これから独り身で生きて行くことを伝えてくると、お雪は明るい表情を見せた。
   神田の菊菱屋へ使いに行った帰り道、三太の後を追うように付いて来る男が居た。三太は何気なく振り返ってちらっと見たが、そのまま気付かぬふりをして歩いていた。自分試そ眼睛疲勞うと三太が走ってみると、男も走って付いてくる。
   「新さん、あの男、わいに用が有るのやろか?」
 守護霊の新三郎に問いかけてみた。
   『悪い男には見えないが、執拗だね』
   「気持ちが悪い」
   『まあ、気付かないふりをしていましょうぜ』



Posted by だけを平らに削っ at 12:53│Comments(0)
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