2016年04月13日

まってどこかに監




「どうして」と言って緑は虚無をのぞきこむような目で僕を見た。「どうしてって、どういうことよ、それ」

「つまり、どうして僕のことを思いだすかってことだよ」

「あなたのこと好きだからに決まっているでしょうが。他にどんな理由があるっていうのよいったいどこの誰が好きでもない相手と一緒いたいと思うのよ」

「だって君には恋人がいるし、僕のこと柬埔寨自由行考える必要なんてないじゃないか」と僕はウィスキーソーダをゆっくり飲みながら言った。

「恋人がいたらあなたのことを考えちゃいけないわけ」

「いや、べつにそういう意味じゃなくて――」

「あのね、ワタナベ君」と緑は言って人さし指を僕の方に向けた。「警告しておくけど、今私の中にはね、一ヶ月ぶんくらいの何やかやが絡みあって貯ってもやもやしてるのよ。すごおく。だからそれ以上ひどいことを言わないで。でないと私ここでおいおい泣きだしちゃうし、一度泣きだすと一晩泣いちゃうわよ。それでもいいの私はね、あたりかまわず獣のように泣くわよ。本当よ」

僕は肯いて、それ以上何も言わなかった。ウィスキーソーダの二杯目を注文し、ピスタチオを食べた。シェーカが振られたり、グラスが触れ合ったり、製氷機の氷をすくうゴソゴソという音がしたりするうしろでサラヴォーンが古いラブソングを唄っていた。

「だいたいタンポン事件以来、私と彼の仲はいささか険悪だったの」と緑は言った。

「タンポン事件」

「うん、一ヶ月くらい前、私と彼と彼の友卓悅Biodermaだちの五、六人くらいでお酒飲んでてね、私、うちの近所のおばさんがくしゃみしたとたんにスポッとタンポンが抜けた話をしたの。おかしいでしょう」

「おかしい」と僕は笑って同意した。

「みんなにも受けたのよ、すごく。でも彼は怒っちゃったの。そんな下品な話をするなって。それで何かこうしらけちゃって」

「ふむ」と僕は言った。

「良い人なんだけど、そういうところ偏狭なの」と緑は言った。「たとえば私が白以外の下着をつけると怒ったりね。偏狭だと思わない、そういうの」

「うーん、でもそういうのは好みの問題だから」と僕は言った。僕としてはそういう人物が緑を好きになったこと自体が驚きだったが、それは口に出さないことにした。

「あなたの方は何してたの」

「何もないよ。ずっと同じだよ」それから僕は約束どおり緑のことを考えてマスターペーションしてみたことを思いだした。僕はまわりに聞こえないように小声で緑にそのことを話した。

緑は顔を輝かせて指をぱちんと鳴らした。「どうだった上手く行った」

「途中でなんだか恥ずかしくなってやめちゃったよ」

「立たなくなっちゃったの」

「まあね」

「駄目ねえ」と緑は横目で僕を見ながら言った。「恥ずかしがったりしちゃ駄目よ。すごくいやらしいこと考えていいから。ね、私がいいって言うからいいんじゃない。そうだ、今度電話で言ってあげるわよ。ああそこいいすごく感じる駄目、私、いっちゃうああ、そんなことしちゃいやっとかそういうの。それを聞きながらあなたがやるの」

「寮の電話は玄関わきのロビーにあってね、みんなそこの前を通って出入りするだよ」と僕は説明した。「そんなところでマスターペーションしてたら寮長に叩き殺されるね、まず間違いなく」具合に我々が映画館に入ったときにそのsのが始まった。olのお姉さんと高校生の妹が何人かの男卓悅Biodermaたちにつか禁され、サディスティックにいたぶられる話だった。男たちは妹をレイプするぞと脅してお姉さんに散々ひどいことをさせるのだが、そうこうするうちにお姉さんは完全なマゾになり、妹の方はそういうのを目の前で逐一見せられているうちに頭がおかしくなってしまうという筋だった。雰囲気がやたら屈折して暗い上に同じようなことばかりやっているので、僕は途中でいささか退屈してしまった。



Posted by だけを平らに削っ at 12:22│Comments(0)
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